こどもアサヒ > ニュースドンとこい! > ニュースドンとこい!過去一覧

オーストラリアの連邦総督って?
新総督が就任

 8月11日、オーストラリアの連邦総督にマイケル・ジェフリー氏(65)が就任しました。聞き慣れない肩書だと思いますが、連邦総督というのは、いったいどういう役職なのでしょうか。

 オーストラリアは、米国と同じように連邦国家で、6つの州が集まって1つの国をつくっています。この国全体を代表する立場にあるのが連邦総督です。憲法は、連邦総督が「国家元首である(エリザベス)女王の代理人」であると定めています。それぞれの州にも総督がいます。各州の総督は、連邦総督の配下にあるのではなく、各自がエリザベス女王の代理人という位置づけです。

 ここでややこしいのは、英国との関係です。米国の場合は、英国の植民地が「独立」を宣言し、これを認めようとしない英国と戦争までして国をつくりました。ところがオーストラリアの場合は、同じく英国植民地だったのですが、英国の同意の上で国をつくりました。憲法も、もとは英国議会の法律です。

 ですから、1901年に連邦国家として出発した当初は、英国から「独立」した国という意識はあまりなく、元首も「英女王」(当時はビクトリア女王)でした。しかし、今日では法律上も、国民の意識の上でも、オーストラリアは完全に英国とは別の国となっています。オーストラリア国民にとって、元首であるエリザベス女王は、「英女王」ではなく「オーストラリア女王」なのです。

 次のような例を思い浮かべてみてください。大企業であるトヨタ自動車の社長が、仮にトヨタ食品というちょっと小さな別会社の社長も兼任していたとします。すると、この人は普段世間からは「トヨタ自動車の社長」とみられており、トヨタ自動車に常勤しています。

 ところが、トヨタ食品の社員にとって、この人は普段会社にいないが、あくまで自分の会社の社長であって、トヨタ自動車の社長ではないわけです。このように考えると、オストラリアの元首のイメージもつかめるのではないでしょうか。

エリザベス女王の代理人形式的な役割

 オーストラリアは議院内閣制の国です。議会の下院(日本の衆議院にあたる)で多数を占める政党の党首が首相となり、内閣を組織して政府を運営します。連邦総督を指名するのも首相です。ところが、こういったことは憲法には書いてありません。憲法上は、連邦総督が政府を運営したり、軍の司令官を務めたりする強大な権限を持っているのです。

 現実には、連邦総督の役割は、もっぱら議会が議決した法律に署名したり、外国の大使から信任状を受け取ったりする形式的なものに限られています。ただし、1975年には、当時の連邦総督が、首相を本人の意思に反して解任したことがあります。ただの名誉職とみるのは間違いでしょう。

 ジェフリー氏の前任者であるピーター・ホリングワース前連邦総督は、今年5月、任期途中で辞任しました。以前に教会の幹部だった時、未成年者に対して性的虐待を行った部下を厳しく処分せず、被害者にも冷たい態度を取ったとして批判を浴びた結果でした。

 スキャンダルがらみで連邦総督が辞任したのは、初めてのことです。君主制をやめて共和制に移行すべきだという意見が国民の中に根強くありますが、この辞任でさらに勢いがついたようです。

 (坂口 智・朝日新聞記者)

(03年8月17日)


朝日学生新聞社のホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての著作権は朝日学生新聞社に帰属します