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イラク戦争で国連の権威はズタズタ
 20日、米国と英国の軍隊がイラクへの武力行使に踏み切り、「イラク戦争」が始まりました。
 イラク問題について、平和解決を目指して国際連合(国連)を舞台に世界各国の話し合いが続いてきました。しかし結局、米英両国は国連の承認なしで武力を行使し、国連の権威は大いに傷ついてしまいました。
意見対立で決議案取り下げ 安保理の承認なしで攻撃
 国連は、第二次世界大戦後の1945年に、世界平和の維持のために発足した国際機関で、現在の加盟国数は189に上ります。国連の諸機関の中でも、特に安全保障理事会(安保理)は、平和と安全の維持に関して「主要な責任」を負うとされています。安保理は、米英仏中ロシアの5つの常任理事国と、ドイツやスペイン、シリアなど10の非常任理事国から成ります。
 国連の憲法とも言える国連憲章には「自分の国を守る場合を除いて他国に対して武力行使するには国連安保理の承認が必要」と定められています。これに基づけば、米英軍の対イラク武力行使にも、安保理の決議が必要となります。
 米英両国も当初は決議を得ることを目指して、安保理理事国の説得に努力してきました。しかし、イラクの核、生物、化学兵器など大量破壊兵器の廃棄をめぐって、「国連による査察が有効な限りは、武力行使を急ぐべきではない」とするフランス、ロシア、ドイツなどと「イラクは信用できないから、兵器を使う前に攻撃するしかない」とする米国、英国などの間で意見が鋭く対立し、話し合いが行き詰まってしまいました。
 安保理の決議には理事国15か国のうち9か国の賛成が必要です。これだけの賛成を得られる見込みがなくなったため、米英などは決議案を取り下げて、直接イラクに「フセイン大統領と2人の息子がイラクを離れなければ、攻撃する」という最後通告を突きつけました。イラク側がこの要求を拒否したため、米英軍は戦争を開始しました。
国連軽視は情勢不安を招く 今後の役割を考える議論を

 米国は確かに政治、経済、軍事などあらゆる面で、現在の世界で圧倒的な力を持っています。しかし、米国が自分の力を過信して、国連や同盟を重視せずに動くと、ほかにも国連を軽視する国が出てきて、国連の国際秩序維持の機能が低下しかねません。中東はもちろん中南米やアフリカでも、情勢が不安定な地域では、安全保障に国連が大きな役割を果たしています。国連の権威が揺らいでしまうと、これらの地域の将来に混乱を招く恐れがあります。
 日本は、国際問題の解決に国連が主要な役割を果たすべきとする「国連中心主義」を掲げてきました。国連を運営する費用の20%以上も負担しています。しかし、今回の事態では、日本の意思が国連での決定プロセスに全く反映されませんでした。イラク戦争後の地域の復興プロセスも含めて、これからの国際社会で国連がどう役割を果たしていけるのか、真剣な議論が必要となります。日本もその議論に積極的に加わらなければならないでしょう。

(山根 祐作・朝日新聞記者)

(03年3月30日)


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