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許されない医療ミス、なぜ起きた?
慈恵医大の医師3人逮捕
会見で謝罪する落合和彦院長(中央)ら病院関係者=9月25日、東京都葛飾区で

 東京都葛飾区の東京慈恵会医科大付属青戸病院(落合和彦院長)で男性の患者(60)が、前立腺がんを取る手術の直後に亡くなったのは、手術を担当した医師のミスが原因だとして、警視庁は9月25日、男性医師3人を、業務上過失致死の疑いで逮捕しました。また、あわせて病院などを捜索しました。医療ミスをめぐって1度に3人もの医師が逮捕されるのは、極めて異例です。命を預かるはずの医師としてのモラルが問題になっています。

 逮捕されたのは、手術をおこなったこの病院の泌尿器科の医師で斑目旬(まだらめ・じゅん)(38)、長谷川太郎(34)、前田重孝(32)の三容疑者です。警視庁などの調べによると、3人は、昨年11月8日に、千葉県松戸市に住む前立腺がんの患者から、腹腔(ふくくう)鏡を使って、がんの患部を切り取る手術をしました。

 この手術は、腹部を実際には切り開かないため、手術のあとに回復しやすいというメリットがあります。しかし、腹の中に入れた内視鏡から送られてくる画像をモニターで見ながら、遠隔操作で超音波メスを使って患部を切り取るのは、たいへん難しい作業です。技術が未熟だと尿管をまちがって傷つけたり、前立腺の表面に走っている毛細血管を切ってしまったりすることが多いのです。

 病院側の発表によると、執刀した医師は、助手としてこの手術に立ち会ったことが2回あるだけで、内視鏡を使った手術も3度しか経験していませんでした。ほかのふたりも同様でしたが、診療部長など経験者は手術に立ち会ってはいませんでした。

 マニュアルを見ながら手術を進め、器具の使い方がわからないため、器具メーカーの担当者を立ち会わせていました。また、出血してもふつうは20分程度で止めるのですが、斑目医師は遠隔操作で毛細血管の束を結びなおすのに時間が大幅にかかり、出血がそのあとも続いてしまいました。

承認も得ず 準備を怠り 無謀な手術
医療ミスで医師3人が逮捕された東京慈恵会医科大付属青戸病院で

 警視庁では、もし早い段階で腹部を切り開く手術に切り替えていれば、患者は死亡しなかったのではないかとみています。

 前立腺がんを切り取るための腹腔鏡手術は、大変難しいため、東京慈恵会医科大学では、5つある付属病院のうち3か所でしか認めておらず、青戸病院は認められていませんでした。また、実施するときは、青戸病院と大学の倫理委員会とで承認を得るよう決まっていたのに、こうした手続きも取っていませんでした。

 3人は手術の前、許可の権限をもっている泌尿器科の部長に対して、「腹腔鏡をやってみたい。自分たちで研究したい」と求めたそうです。また、亡くなった男性やその家族に対して、手術の前に、この手術には命の危険がともなう、といった説明はしていなかったようです。

 確かに、大学病院は技術をみがく場でもあります。しかし、準備を怠ったうえでの手術は、「あまりにも無謀」です。「実験台」にされるのはごめんですね。モラルや技術まで含めて、患者の側が医師を選ぶ手だてはないのでしょうか。

(斎藤 智子・朝日新聞記者)

(03年10月5日)


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