2002年5月5日は、フランス人にとって、忘れられない日になるのではないでしょうか。この日、大統領を選ぶ決選投票が行われ、現職のジャック・シラク氏(69)が、対立候補のジャンマリ・ルペン氏(73)を抑えて再選されました。ルペン氏は「移民を追い出せ」などと主張している極右政党「国民戦線」の党首です。4月21日に行われた第1回投票で、おおかたの人の予想を裏切ってルペン氏が第2位に躍進し、極右の政治家が大統領候補として決選に出るという「大事件」になっていたのです。
フランスでは、大統領は国民が直接、投票で選びます。最初の投票で過半数を得る候補者がいないと、上位2人に絞って決選投票が行われます。今回の選挙ははじめから、保守系の共和国連合の党首で1995年から大統領を務めているシラク氏と、彼の元で首相を務める左派、社会党党首のリヨネル・ジョスパン氏(64)との「一騎打ち」と思われていました。
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移民排斥を訴えるルペン氏 失業問題などで国民に不満
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ルペン氏とは、どんな政治家なのでしょう。治安が悪化し強盗などの犯罪が増えているのは、主にアジアや中東、アフリカからやってくる「移民」のせいだと主張しています。人種差別的な発言も多く、第二次世界大戦の時にナチス・ドイツがユダヤ人を虐殺したことや広島に原爆が投下されたことを、「ささいなこと」と話したこともあります。72年に国民戦線をつくった時は、ほとんど相手にされていませんでしたが、前回の大統領選挙では15%の得票率を得るまでに支持を広げていました。
なぜ、こんな人が、そんなに支持を集めたのでしょう。最近でこそフランスは外国移民を制限していますが、他の欧州各国に比べ、移民の受け入れに寛容な社会です。その結果、たとえば国内のイスラム教徒は約90年前に5000人足らずだったのが、今は約500万人に増えました。
フランスを含む欧州各国は今、通貨を統一したり、互いに国境の入管手続を廃止したりして、「一つの大きなヨーロッパ」をつくろうとしています。その過渡期にあって、経済や社会にはさまざまなあつれきが生じており、国民の間に不満がたまっています。地元の新聞によると、今回ルペン氏を支持したのは、労組や行政の保護を十分に受けられず、「移民」に仕事を奪われかねない貧しい白人の男性が多かったそうです。まさか2位に入るとは思わず、政府批判のつもりで投票した人もかなりいたでしょう。投票しなかった人の割合が過去最高だったのも一因でした。
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決戦前に各地で反極右でも シラク氏が大差で破り再選
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「ルペンショック」の直後から、フランスでは各地で「反極右」のデモが繰り広げられました。労組や市民団体はもちろん、高校生までがプラカードを手に、街を練り歩きました。その数は一時、パリだけで40万人、全国で計100万人にふくらみました。アルジェリア移民の子としてマルセイユに生まれたサッカーのジダン選手や、ガーナ系のデサイー選手も、極右に投票しないよう呼びかけました。
その効果があったのか、シラク氏は決選では大差で勝利しました。ただ、主義を曲げて保守のシラク氏に投票した社会党や共産党の支持者も多かったようです。リヨンでは、不満の気持ちをあらわすため、洗濯バサミで鼻をつまんでシラク氏に1票を入れた人もいたそうですよ。
(斎藤 智子・朝日新聞記者) |