| 4年前の夏、和歌山市の自治会が主催した夏祭りで、カレーを食べた小学生や高校生らが次々にヒ素中毒で死ぬという事件がありました。林真須美(現在41)という女性が殺人などの疑いで逮捕され、裁判が行われていましたが、11日、和歌山地方裁判所は林被告に「死刑」を言い渡しました。林被告は、無罪を主張したばかりか、いっさい話をしない、いわゆる「黙秘」を続けていたため、どんな判決になるか、注目が集まっていました。 |
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夏祭りで4人がヒ素中毒死 他に保険金目当ての事件も
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| 事件発生当時の林真須美被告 |
事件が起きたのは7月25日。夏祭りのため、自治会の主婦らがカレーを作って、住民にふるまった時のことです。東側の鍋のカレーを食べた67人が、食後、激しく吐くなどして病院に運ばれました。そして、小4の男の子や女子高生ら4人が急性ヒ素中毒で死亡しました。カレーからは、猛毒の亜ヒ酸(ヒ素)が検出されましたが、最大1350人が死ぬほどの分量だったとされています。
逮捕された林容疑者は、以前、保険会社の外交員をしていた女性で、詐欺や殺人未遂など他の7事件でもあわせて起訴されました。この日の判決で有罪となったのは、「毒入りカレー事件」のほか、「夫にヒ素入りのくず湯を食べさせて殺そうとした」(1997年2月)、「林夫妻の家に住みこんでいた知人の男性にヒ素入り牛丼を食べさせて殺そうとした」(97年9月)、「同じこの男性にヒ素入りうどんを食べさせ殺そうとした」(98年3月)などの6事件です。ご覧の通り、どの殺人未遂事件にも、ヒ素が、「殺し」の道具として使われています。
ヒ素は、林被告の夫が92年まで経営していたシロアリ駆除の会社で、シロアリを殺す薬として使われていました。「林被告が手にいれるのはたいへん簡単」(判決)だったようです。被告はまた、夫と従業員の間の会話から、「耳かき1杯の量で人が死ぬ」ことも、よくわかっていたとされています。判決は、こうした殺人未遂事件について「(その)料理にヒ素を入れることができたのは、林被告しかいなかった」と断定しています。
林被告は、仕事としていた保険制度を悪用して、これまで、多額の保険金をせしめてきました。被害者となった身近な人たちにはみな、たいへん高額の死亡保険金がかけられ、死ねば林被告の手元にカネが入るようになっていました。実際、今回詐欺罪に問われた事件で、林被告は高額の保険金を手に入れ、土地や指輪、毛皮のコートなどを買っています。
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混入できたのは林被告だけ 食べたら死ぬと承知で実行
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| 死刑判決後、テレビのライトに照らし出された夏祭りの会場になった空き地=11日、和歌山市で |
しかし、カレー事件では、どうして林被告が大量のヒ素をカレーに混ぜたのか、という一番ポイントとなるはずの「動機」が、最後までわかりませんでした。
それでも判決は、「ヒ素をカレーに混ぜるチャンスがあった人物は、証拠からみて、林被告しかいない」と結論づけました。理由として、事件までの約1年半の間に、夫や知人にヒ素入りの食べ物を4回も混ぜて殺そうとしたこと、被告が調理場で1人でカレー鍋を見張っていた時に、周囲の様子を気にする「不自然な行動」をしていたのを他人に見られていること、などをあげています。裁判官は、動機は不明でも罪に問える、と考えたわけです。
その上で判決は、「カレーを食べた人の中から死ぬ人が出るかもしれないが、そうなったらそれでかまわない」といった、一種の殺意(未必の殺意)を林被告が抱いていた、と結論づけました。子どもを始めさまざまな住人が食べると知っていながら、大量のヒ素を混ぜた行為は、悪質かつ冷酷な「無差別殺人」であるとして、死刑を求刑したのです。
被告は、判決後、ただちに控訴しています。控訴審の成り行きが注目されます。
(02年12月25日)
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