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米国の新戦略「ブッシュ・ドクトリン」って?
 ブッシュ米大統領は9月20日、大量破壊兵器を持つ「敵」への先制、単独攻撃を正当化し、圧倒的な軍事力の優位を堅持することを打ち出した新たな政策「ブッシュ・ドクトリン」を発表しました。昨年9月に起きた米同時多発テロ後の安全保障政策の集大成ともいえ、抑止や国際協調などといったこれまでの戦略を転換し、米国の「単独行動主義」をいっそう強める性格のものです。
国際的な協力より国益第一 単独での先制攻撃も認める
新戦略を発表したブッシュ大統領

 新政策は「米国の国家安全保障戦略」と題した文書を通じて示されました。それによると、同時多発テロによって、兵器の広がり防止、軍縮、脅威の封じ込めなどといったこれまでの戦略は通じなくなったと説明して、米国は圧倒的な軍事力、経済力を使って「世界でただ一つの超大国」の立場を守っていこうと訴えています。

 これまでと決定的に違うのは、テロ組織や「ならず者国家」との戦いに対して「国際社会の支持を得るための努力は続けるが、必要に迫られれば単独での行動もためらわず、先制的な行動で自衛権(国を守る権利)を行使する」といっていることです。

 第2次世界大戦の後、米国とソ連という二つの大国の対立(冷戦)の時代が長く続きましたが、1991年のソ連崩壊で冷戦体制が崩れてから、国と国の争いなどで軍事力を使う場合には国連を中心に国際的な合意を優先させるという流れが定着しました。ところが、ブッシュ大統領は「国の安全を守るためには、国際的な協力よりも自分たちの利益を第一に考えよう」という考え方の持ち主で、同時多発テロでそれがいっそう強くなりました。ブッシュ・ドクトリンは、そうした考え方をまとめたものです。

米国の念頭にはイラク攻撃 「我こそがルール」に疑問も

 背景にはイラクを巡る情勢があります。90年にイラクがクウェートに侵攻。翌年、湾岸戦争が起きました。当時、米軍を指揮したのは今のブッシュ大統領の父親のブッシュ元大統領で、米国を中心とした多国籍軍が勝利しました。しかし、フセイン・イラク大統領は追放されず、今も独裁政治を続けています。さらに、フセイン政権はミサイルや化学兵器などの大量破壊兵器を世界にばらまき、国際テロ組織を支援していると米国は見ています。米国にとってフセイン大統領は「平和の破壊者」であり存在自体が許せません。

 米国はイラク攻撃の準備を進めていますが、新政策により国際的な合意より自らの判断を優先させるとの姿勢を鮮明にし、イラクに圧力をかける意味もあります。

 もちろん、イラクは反発しています。また、「自分たちこそがルールだ」というような米国の態度には他の国からも疑問も広がっています。襲われそうだから先制攻撃することを認めたのでは、武力衝突が世界中に広がる恐れがあるからです。米国の新政策は、これまでの世界の秩序を大きく揺るがす可能性をはらんでいます。

(高槻忠尚・朝日新聞記者)

2002年10月6日


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