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2015年11月15日付
高校生のデモや集会などの政治活動が一部解禁された。来年夏の参議院選挙から、選挙権年齢が18歳以上に下げられたのを受け、文部科学省が放課後や休日については容認する通知を全国の高校に出した。ただ、授業中など学校内の活動は引き続き禁止とした。
政治活動とは、原子力発電所の再稼働など特定の政策や、政党・政治団体への支持、反対を目的に、集まって行進したり、会を開いたりすること。学生運動が盛んだった時代の1969年、旧文部省(今の文部科学省)が「国家・社会としては行わないよう要請している」と規制する通知を出していた。
10月29日に出された今回の通知では、休日や放課後に行う校外での活動について「生徒が判断し、行う」と認め、古い通知は廃止した。これまでの基準をゆるめた形だ。
一方、授業中や生徒会活動、部活動については、これまでと同様に禁止された。休日や放課後でも、校内については他の生徒の支障にならないよう、制限または禁止とした。校外も、法律に違反するおそれが高い場合には、制限または禁止が必要、とした。
文科省は大まかな基準は示したものの、実際の事例は担任の教員や校長が判断する、としている。このため、現場からはどこまでがよくて、どこからがだめなのかがわからない、と戸惑う声が出ている。
例えば、安全保障法制への反対デモは逮捕者も出ているが、「法律違反のおそれが高い」と言えるか。高校の新聞部が発行する校内新聞に原発反対、と主張する文章を載せた場合はどうか。
各高校の教員による試行錯誤が続きそうだ。
18歳選挙権と高校をめぐっては、今後大きなテーマになるのが「政治的中立性」だ。
文科省は政治教育を推進する立場で、9月には、投票の仕方や選挙の仕組み、模擬投票の仕方などをまとめた副教材をつくり、発表した。一方で、同時に作成した教員が教える際のヒントをつづった「指導書」では、政治的に意見が分かれるテーマで個人的な意見を言うことを避けるなど、中立性を守るよう繰り返し指摘した。
教員は、発言の仕方一つで考え方が生徒の主義や主張に影響しかねない、という心配があるからだという。自民党は7月、政治的中立を逸脱した公立高校教員に罰則を科す法改正を安倍晋三首相に提言した。
政治的中立性を守ろうと気をつけすぎることで、教員と生徒が本音で対話できる活発な授業ができなくなることはないか。政治のタブー視につながり、高校生の政治活動にブレーキがかからないか。
学校では、そんな視点からの議論も必要になるだろう。
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
高浜行人
朝日新聞社会部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。